奈良時代の初めに書かれた「常陸国風土記」には、茨城の磯にはアワビ、ウニ、魚介類が多く、海辺には豊かな里があり人々は磯からさまざまな恩恵を受けている様子が記述されている。磯はまた食料生産の場としてばかりでなく、いにしえから人々に安らぎと潤いを与えてきた場でもある。戦後の高度経済成長期以降、多くの浅海や干潟などが失われていく中、近年、残された浅海域生態系の保全と再生を図りながら、その豊かな浅海域の環境と生物を「里海」の地域資源として再認識し、地域の活性化・地域再生に役立てようという動きが活発化してきている。ここでは、那珂湊地区の白亜紀層岩礁浅海域を事例に、アワビ・ウニ・ヒジキ・フクロフノリなどを中心とする藻場生態系,スズキ・ソイ類・メバル・マダコ・イセエビなどを中心とする浅海岩礁生態系の価値を再確認するとともに、浅海漁業の再生と地域活性化のための課題について議論する。
(連絡先:029-263-7363 茨城県水産試験場 所 高利)
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